ガチの交渉をするには信頼関係が必要な気がしてならない
私は購買の仕事をしている。
そのため交渉ごとは日常茶飯事。何も交渉をしない日はないというくらい、毎日なにかが起こり交渉をしている。まるでサファリパークのような仕事なのだ。
例えば、大阪で地震が起きた。
それにより、被災したメーカーがあり、そのメーカーの材料はいろんな会社で取り合いになる。
6月18日に大阪で震度6弱の地震があり、争奪戦は始まった。
・うちの会社はフォーキャストを出している!フォーキャスト分は確保せよ
・大阪以外で製造したものはないか
・被災した倉庫から一切物は取り出せないのか
・新規製造したら最速でいつ納入なのか
すでに3つの材料でそんな状態となったのだ。
だから、5~6社と電話しまくり、電話がきまくる。
営業と製造を巻き込んで、電話・電話・電話。
例えば、恒常的に品不足の材料がある。
シリコーンやフッ素だ。
これらは本当に供給タイト化しており、「ちょっと多目に発注したろ!」ってポチっとやると、電話で怒られるのだ。
メーカー「そんな発注する言ってなかったですやん!」
とね・・・すまんね。でも工場と営業がすごい剣幕なの・・・・
意地でも数量は確保したい。だから、交渉なのだ。
・値上げを〇〇円飲むから、いつ分からの供給を10%伸ばしてよ!
・今後輸送は2ヶ月に一回で5t一括でいいから、300㎏数量上乗せしてよ!
・これとこれ、品種統合本気でやるから、数量ちょっとだけ融通して!
・御社とは今まで1社購買でやってきた、これは信頼関係である!
・うちは役員が交渉に出るぞ、御社も役員を!!
こんなことを毎日やっている。さすがにすり減る。
購買の仕事で忙しいと必ず人としての心を失っていくだろう。
反対に常時品不足の材料を扱う営業で、業務量が極めて多くても同じだ。
人としての心を失っていく。
だが、これらを差しおいて、現実的に超困っている仕事がある。
撤退する会社に、大量に材料を作ってもらうことだ。
A社はプラスチック関連の事業を撤退する。これは数か月前に判っていたが、私の担当ではなかったので気にしていなかった。
現状、ほかの会社の材料に切り替えるべく動いているが、切り替えまで当面の間、A社の材料を使わなければならない。
しかし、いろんな会社がその会社のプラスチックを必要としているため、作りだめ含めてオーダーが殺到して、こちらの欲しい数量がまったく手に入らないのだ。
更に難しいのは・・・・
私の会社の前担当が、「この数量だけ確保してもらえれば大丈夫!」というフォーキャスト情報を出していたのだ。
そして、海外向けの数量が明らかになると、事前に伝えたフォーキャスト情報じゃ全然足りなくて、増量しまくってもらう必要がある。
簡単に言うと、「全盛期のたまごっちを10個手に入れる」感じだ。
更に相手は事業撤退する会社。やる気はMAXではない。
こっちはフォーキャストが全然合っていないという、明らかな失敗をした。
そんな絶望的な状況で、途中でいきなり私にこの仕事が引き継がれたのだ。
前の担当がギブアップしてしまい、ハードネゴシエーター役が私だ。
A社担当と私は一度も会ったことがなく、まずは要望を改めて伝えることと詳しい感触を探るために打ち合わせをしたが、「会っていきなりガチの交渉って難しい」と心から感じた。
人となりもわからず、これまでの経緯も浅くしか知らず、メーカー側の詳しい事情、製品の出来る工程もわからない。
その材料が現在、24時間交代勤務で作るほど忙しいのか、日々残業2時間程度で作られているのかもわからない。
毎月いつ頃生産計画が組まれるのかもわからない。製造工程のどこにどれだけ時間がかかるのかもわからない。
雑談もしていない。相手の好きな食べ物も趣味もわからない。
先方もきちんと対応してくれたため、交渉は一応進んだが、ガチで本音でお互いの力を振り絞ってこの局面を打開しよう、というまではやはりいかなかったと心残り。
ガチ交渉をするには信頼関係が足りなかったのだ!
こっちの要望は多いが、なんで初めて会った私にそこまで尽くさないとならないのか、と思われても仕方がない。
でも、5年以上一緒に仕事をして、お互いの趣味や日常であった面白いことまで知っている同士で、酸いも甘いもなやり取りをしてきた深い関係ならば、また交渉は違っただろうと思う。
そういった意味では、付き合いが長いだとか、訪問回数が多いってだけで、それは素晴らしい営業上・購買上のチカラになるような気がした。
以上