9月末、売上ノルマ達成のために皆必死だが・・・
私は購買の業務も一部しているのだが、9月末は結構忙しくなることが多い。
それはなぜか。
多くの会社は4月~翌年3月末が決算期であり、9月末は「半期決算」にあたるからだ。
決算書を公開しなければならない会社はこの「半期決算」の数字の良さに拘る。
これにより株価は大きく動くからだ。
また年度末の見通しにも「普通ならば」響いてくる重要なイベントである。
「普通ならば」だ。
最近このあたりの仕組みが問題を先送りしているようでちょっと気にくわなかったりする。
半期決算は重要なため、各営業部門には通常ノルマ必達が求められるのである。
なぜならば半期の成績が悪い場合、下手をすると業績下降修正を求められてしまう。
そんなことになれば株価はダダ下がり。
銀行からの借入金利なんかにも影響してくる可能性がある。
だからノルマは必達なのだ。
上の人間は「予算を達成しろ!」と厳しく叱責をするのが当たり前になっている。
そうなると営業部門の人たちはどういうことをするのか。
こうなるのだ。
営業マン「9末までにまとまった量納入させて下さい。安くしますから」
とにかくノルマを達成するために、色んな調整をする。
ノルマを達成しないとなんていわれるかわからない。全力でやる。
しかし私は頼みこまれてしまうと、弱い。
私はノーと言うのが苦手で、特にきちんと素早くレスポンスを返してくれるような若手営業マンに頼まれるとなんとかしてあげたい、と思ってしまう。
するとどうなるか。
私は工場に、材料が安く入るから、何とか買ってよ、というのだ。
私「工場の担当さん、9末で例の材料大量にぶち込んでいいですか?大量に。」
工場担当「半期末の在庫になるから厳しいです。期末は在庫減らせって上がうるさくって。」
私「でもこれ、必ず使う材料なので、安く買えたら後々のコストダウンは確実ですよ。点で見れば在庫増ですが、3か月スパンで見たら会社は負ける要素ないです。すいません、ちょっとだけダメですか?」
工場担当「そこまでいうかね。まあ仕方ないな、それじゃ3トンだな。これ以上は面倒見れない」
私「ありがとうございます。助かります」
結果的に自社の長期的成績にはプラスになることはなる。
・・・と思いきや、見方を変えると、本当にこれは儲けなのかわからなくなってくる。
■まず取引先の影響について
値下げして売ってノルマをギリギリ達成するが、値下げして売るのは「利益率圧迫」である。
そして、10月の売上は9月に無理やり押し込んだ分、減るのだ。
そうなると、翌年3月の年度末決算でも同じことをしなければならなくなる。
3月の20日くらいに「買って下さい!」と。
毎年半期ごと、延々と需要の先食いをする羽目になる。
下期で事態が好転すれば良いのでは?と思うが、通常メーカーは下期の売上を高めに設定する。
建設に関わる業種ならば特に下期の売り上げ増が顕著なはずである。
しかし・・・その下期の売上はすでに9末で一部失われている。
更に半期決算がノルマ達成となると、経営サイドは判断を見誤る。
「業績悪くないじゃん」
と思ってしまうかもしれない。
数字を追う現場を離れていた期間が短い役員ならば、需要先食いをして無理やり数字を合わせたことは確実にわかるだろうが、何年も総務や財務の管理部門畑にいたり、技術や研究開発の畑にいるとわからないかもしれない。
そして、最大の問題は「別の利益を生む仕事が出来るかもしれない時間を使って、売上の嵩ましに走っていること」
こんなことを「営業部をあげて」をやっているのだ。
これは小学6年生とか、中学生の話ではない。
50代の部長、40代の課長、30代の実務エース、20代の若手・・・これらすべての人が一丸となって「売上のかさまし」に走っているのだ。
市場調査や新規取引先開拓でもない、同業の調査でもない、工場との認識すり合わせでもない、自社の製造工程を学ぶでもない、ギブテイなどの紐付け営業でもない。
9末の無理やりの売上の嵩ましに奔走しているのだ。
■では購買サイドはどうなんだ?
通常よりも安く買うことが出来る分、コストダウンにはなる。
しかしこれは価格体系がおかしくなる。
毎年同じ時期に駆け込みで買ってもらおうと取引先が来る。
そのときだけ値下げがあり、安く買える。
そんなことを続けていると元々その価格で売れないのか、と疑問に感じ始める。
そんなとき取引先の決算書を見ると、売上原価率は悪くなかったりする。
ということは平時では大幅な利益は出せているのだ。
「あの会社は決算のときに毎回値引きがあるから見かけ上のコストダウンが簡単」なんて思ってしまったら最後である。
通常、購買部門にはまったく意味のわからないルールが課せられている。
「前年比○○%購買単価を下げることがノルマ」などと。
原材料費は需給バランスで決まってきて、価格が変動しているのにも関わらず、前年度比なんかを使うのだ。
そうなると、原油の価格が上がると、たいてい詰むのだ。
しかし、半期末にコストダウンを持ってくる会社と付き合っておけば、効果が出しやすい。
だからその会社を良く使うという超簡単なテクがあるのだ。
原材料の値動きと需給バランスを見て、絶えず適性価格かチェックしなければならないと思うが、その考えが薄れてしまう。
しかも値引きできる=売上の達成でなく、基本的には営業利益の達成だろう。
つまり、値引きしても利益はゼロではないのだ。
そしてなにより「他のことに時間を使うべきところで小銭を稼ぎに工場へ無理やり材料を押し込んでいる」。
■実際に材料を使う工場サイドはどうなのか
発注点などがあればそういうルールから逸脱した発注によりイレギュラーが起こる。
小さなことではあるがミスの原因になる。
対応している時間自体が無駄だが、何らかのミスが起こり、材料供給が一瞬でも止まったらコストダウン効果などすぐに吹き飛んでしまう。
工場にとって、機械と人を遊ばせることは資本主義的には「超アウト」なのである。
そして、こんな調整をしているだけで「他の業務をやる時間が無駄な材料の納入調整に取られてしまう」。
これで年度末に忙しい、忙しいと言いながら残業をしていたら、大企業なら本当に笑えない損失になりうるのだ。
なぜなら時間外手当ては1.25倍の割り増し支払いが必要だからだ。
製造業の時給平均は2600円だが、こんなことをしている1時間は3000円どころでない支払いになるのだ。(社会保険の折半分を含めたらもっと会社コストをかけていることになる)
もうつじつまを無理やり合わせるための決算スーパーぶち込み祭りは終わりだ!!!
みんなまともに考えるがよい。