「私の夏うた」は病に倒れながら聴いたField of viewの「突然」
今週のお題「私の『夏うた』」
中学生の夏休みというのは特別なものだと思う。
小学生時代は行動範囲が狭い。そして親の干渉もかなり強いと思う。
・・・だから、虫取りをして、ラジオ体操をして、市民プールに出掛けるしかない。
そして、お盆に祖父祖母の家に行き、アイスを買ってもらい、少しお小遣いを貰う。
中学生になると、部活があり、行動範囲も「電車」が使えるくらいには広がると思う。
私は部活も真面目にやっていないし、友達が多くもない。
でも、夏休みに入る直前は何か特別な「思い出深い出来事」が起こりそうな予感がして、妙なワクワク感があった。
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世間的には、友人と夏祭りや花火大会にいったり、部活の合宿をしたり、はたまた炎天下で部活に精を出したりという思い出がある人が多いのだと思う。
なんとなく、夜に出掛けるだけでワクワクし、男女で花火大会に出掛けるなんて、一生の思い出になりそうなくらいに思える。
もう20年も前の話になるが、そんな期待すべき中学生時代の夏休み、私は病気で一日中なにをするでもなく寝込みながら音楽を聴いただけの夏があった。
病気になった日、その日の昼食を鮮明に覚えている。
夏休みが始まり間もない日のことだ。
我が家では、休日はたまに父親が昼食を作ったりする。
そんなに凝った料理ではないが、その日は蕎麦に冷やし中華のような具材が乗った、冷やしのかけそばだった。
私は当時から体格はそれなりにいいほうで、牛乳なら1日1本飲むくらいの育ち盛り。
しかし、その日のソバはまったく味がせず、数口しか食べられないで残した。
そもそもご飯を残すなんて思い出す限りで一度もないというくらいなのだが、その日はどう頑張っても飲み込めなかった。
味付けが悪いわけではない。すでにその時に体調がおかしくなっていたのだと思う。
私以外は皆完食していたのだから。
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そして、昼食を残したあと2時間くらい経つと、非常に気持ちが悪くなった。
残念ながら、ソバは下水道に真っ逆様に流れていくことになった。
村上春樹風に言えば「風のない日に静かに立ち上る煙のようにソバは海に帰っていく」感じだ。
こうして北海道で採れたそば粉は、収穫、精製され、挽かれて粉になり、工場でこねられて蕎麦となり、包装される。
それはスーパーに並べられ、我が家が購入し、消化されずに海へ帰っていくのであった。
さて、私の病状のその後はひどいもので、まず高い熱が出た。
38℃オーバーである。
そして咳が出る。
肺が腫れているような、渇いた咳が出続けとても苦しい。
何かきっかけがあれば、ずっと咳をしている、という感覚だ。
だが、水分を多く摂ると気持ち悪くなり、その水分は下水道行きだ。
食事はまったく摂れなかった。
液体カロリーメイトであっても胃が全然受け付けないくらい食べることが出来ない。
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「食べる」→「咳」→「吐く」の繰り返しで食べる意欲すらなくなった。
数日の間、様子を見ても回復には向かわず、さすがにこれはヤバいと病院まで車で送ってもらう。
地元の総合病院だ。
父、母共に「あそこの総合病院はちょっとね・・・」と言いつつも、割と重めの病状なこと、また家から近いとということから、総合病院に行くことになった。
なんでその総合病院があまりよく思っていないのかは30歳を過ぎた未だに聞けていない。
総合病院へ着く。
鮮明には覚えていないが、ハキハキしているとは言い難い疲れた初老の医師が担当だったと思う。
そこで簡単に診察を受ける。
その判定は「夏風邪」。
「クスリダシテオキマス。オダイジニ」という感じだ。
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私は子供のころ、あまり人を疑わなかった。
医者に診てもらえばもう大丈夫。薬も貰ったことだし、寝てりゃ治るか！くらいに思っていた。
ちなみに薬は圧倒的に不味い、「小麦粉のような粉薬」で、ただでさえ胃が物を受け付けないため、オブラートに包んだり盛大に工夫をしないと飲めなかった。
飲んだ後に気持ち悪くなり、最終的にトイレへさようならになってしまうこともあった。
コスト削減のために本当に「まずい小麦粉」を出して、プラシーボ効果で治そうとしたんじゃないかと思うくらいの酷い代物と思う。青汁のほうがマシなんじゃないか、と。
そんな不味い薬を飲みながら、５日ほど様子をみた。
その間、体も重く、熱はずっと38℃以上、たまに39℃台にも乗る。
動くと咳が出る。
だから、ラジオと音楽、ゲームが私のそのときのお友達だ。
当時ラジオで「スーパーカウントダウン50」という番組があった。
それは、音楽のランキングにしたがって曲ひたすら流す番組である。
1位～3位くらいは、丸々1曲流れるくらい気前が良く、私は以前からその番組を録音し、気に入った曲をカセットテープに集めていたのだ。
熱と咳がきつくてもすることがないので、ラジオを聴く。
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・・・・今週の第2位は！
Field of viewの「突然」！
その頃は音楽を聴き始めたころで、あまり多くのアーティストは知らなかった。
そこでこの曲を聴いて衝撃を受けた。
ボーカルのストレートな声と、少しひねったサビのメロディーラインが素晴らしい曲だった。
すぐに録音をする。
本当にいい曲で、色んな曲と合わせて100回くらいリピートしたと思う。
することがないため、面白いラジオがなければ「突然」をずっと聞き続けていた。
その後も熱は一向に下がらなかった。
熱が38℃になってから1週間以上経っても、なに一つ病状が改善されていない。
青春の中学の夏休みに「なんでこんなことになったんだろう・・・」「このまま治らないのか・・・」なんて思うこともあった。
かなり体力的にも辛くなってきており、その時の支えはField of viewの「突然」だった。
体重は3kgくらい痩せた気がする。
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そうして父親が休日になる。
なかなか変わらない病状から、父親の知り合いの内科に診てもらうこととなった。
小さな建物の内科だった。
昔その人には会ったことがあるのだが、その時から変わらず太っちょで、カバのような顔をしていた。
そして、酒を飲みまくるオッサンなのだ。
酒を飲んでいる印象しかないので、酒を注射されやしないかと思ってしまうくらいだ。
検査をし、こういわれた。
「マイコプラズマだな」、と。
ちゃんと対処しないと死ぬくらい体力が奪われる、と言っていた。
そして点滴を30分だったか1時間だったか打ってもらい、薬を貰って帰る。
・・・・腹が減った。
点滴のおかげなのか、体調が明らかに変わっている。
この1週間、飯を食べようなんて一切思わなかったのに、腹が減ったことにすごく驚いた。
帰りの車でも「突然」をカセットテープでかける。
そして当時ポカリスエットのCMに「突然」は使われていたので、なんとなくポカリをねだり、買ってもらう。
その後、翌日あたりで37℃台まで熱が下がり、3日も経ったらいつも通りの体調になっていた。
それから20年近く経ってこんなことがあった。
父親と話している際・・・・
「最近は医者を採点するサイトがあってさ、〇〇内科にみんなで最高得点つけてたら、評価が地元でトップになっちゃって、人が殺到しているんだってさ。忙しいからやめてくれ！と、〇〇内科に言われちゃってね・・・」
父はシニアのスポーツチームに所属していて、そこのみんなでその内科の点数を、面白おかしく上げまくったとのこと。（いい歳してなにやってるんだか、とも思った。）
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ただ、なんとなく思うことがある。
みんな「ふざけて最高得点をつけた」なんてことを言っているが、実はスポーツで痛めたときや病気の際に助けてもらっていて、その恩があって本心から最高得点をつけているのではないか、と。
少なくとも私にとっては最高得点の医者だった。
私はパリピでも無ければ、友達も多くはない。
部活も真面目にやったためしがないため、「印象的な夏休みの思い出」というのは、実はこのマイコプラズマにやられた夏なのだ。
だから、その当時、ベットに横たわりながら空の青さや夕立を見ながらひたすら聞いた「突然」が私の夏うたなのだ。
今でも夏になるとなんとなくあの病気で辛かったことを思い出す。
その後、一人でカラオケに行けば「突然」を歌う。
あれだけ聞いたから、今後も忘れることはないと思う。
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以上
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